あの阪神・淡路大震災において震源地となり、町の9割以上におよぶ世帯が甚大な被害をこうむることとなった兵庫県津名郡北淡町。その痛ましい惨状から回復するための復興過程において、なによりも目標とされたのは「環境に優しい創造的な復興」でした。
この<北淡中学校>は、地域の2校を統合した町唯一の中学校ですが、震災によって計画が一時中断され、去る2004年3月に無事完成したという経緯を持ちます。当然ながら、新しい町づくりのための基本テーマはこの施設にも確実に継承されており、未来の北淡町を担っていく世代を健全に育む場としてはもちろん、地域活動の拠点ともなることを想定。まさに、町全体の創造的復興のシンボルとして完成しました。
環境共生あるいは地域の活動拠点という、従来の学校施設とは次元の異なるコンセプトを随所に盛り込んだ<北淡中学校>ですが、その設計に当たってはノミズの瓦製品がいたるところに採用されています。
たとえば、校舎棟の屋根瓦はもちろんですが、雨水を集めてグランドや植栽の散水に利用できるというユニークな機能を持った体育館の屋根にも独特な瓦をオリジナルに設計。やわらかなラウンド形状をしたスパニッシュな表情の窯変瓦が、屋根重量を考慮して板金屋根の上に整然と葺かれています。
また、「集いの大階段」と名付けられた、まるでステージを思わせるような階段部分には、300角の窯変敷瓦を一面に敷設。登下校あるいは地元集会時の受け入れ空間であることから、瓦の一枚一枚を筋入りのデザインとすることで、利用する人々の足元が滑らないよう配慮されています。さらに、校門の校名板も敷瓦で製作されるなど、敷地内のいたるところで、瓦の優しい表情に触れることができます。
学習施設としては、各種情報の核となるコンピュータを備えたメディアセンターや、無線LANによるネットワーク機能、さらには太陽光発電システムなど、最先端の機能を豊富に備えた<北淡中学校>。
しかしながら、その表情は、豊かな緑化環境がいたるところに設けられ、木製デッキ材や前述の瓦素材などがふんだんに使われ、親しみやすい柔らかな表情を人々に与えています。21世紀の教育施設としてふさわしい、充実したインフラによる快適性と、心地よいぬくもりを両立させた<北淡中学校>という素晴らしい環境。その実現において、ノミズの瓦製品および設計アイデアが大きく貢献しました。