日本に瓦が伝来してから約1400年、淡路島で瓦づくりが始まってからでも400年以上の歴史があるといわれています。
社寺から城郭、町家へと、瓦の利用が普及するにつれて、日本人の原風景には伝統美としての甍屋根が刻まれていきました。真新しい甍の整然とした美しさはもちろんですが、時の経過とともに侘寂をたたえていく、いわば“古美る”姿に日本人は大きな共感を寄せてきたのでしょう。
しかし現在、瓦を取り巻く環境は、決して好ましい状況ではありません。住空間の洋風化や建築物の高層化は、瓦を景観の中心から遠ざけつつあります。また、阪神淡路大震災によって流布した“瓦は震災に弱い”という大きな誤解も、いまだ完全に拭われたとはいえません。もちろん、こうした現状を招いてしまった責任の一端は、瓦メーカーの古い姿勢にもあったといえます。生活意識の変化や建築技術の進化を直視せず、技術革新や新製品開発を積極的におこなってこなかったことや、画一的な大量生産によって瓦本来の魅力である手技を軽視してきたことなどが、今日の状況を招いているのかもしれません。
私たちノミズはこうした現状にかねてから危惧を抱き、さまざまな試行錯誤をおこなってきました。従来にない表情を持つ屋根瓦を開発し、屋根以外の空間での瓦利用を模索し、瓦技術を応用したまったく新しい製品開発をおこなってきたのです。同時に、瓦を取り巻く現状を改善していくためには、より効果的な情報提供が必要であることも痛感してきました。新製品情報はもちろん、瓦の長所・短所に関する率直なデータの提供や、正確かつ効率的な施工援助など、設計者や生活者の方々とダイレクトにコミュニケーションできる方法を探し続けていたのです。
こうした願いが、このホームページ開設という決断に結びつきました。リアルタイムに近い速度で情報を提供できるインターネットは、迅速な情報提供をおこなううえで理想に近いものがあります。また、一方的な告知ではなく、不特定多数の方々と双方向で情報交換が可能である点も、私たちが大きな期待を寄せる部分だといえます。設計者や生活者の方々からはもちろんですが、瓦に限らず「景観」という社会的資産に多少なりとも関与する、あらゆる分野の専門家の方々からも忌憚のないご意見や情報がお寄せいただけることを期待しているのです。
さて、私たちノミズが、“人々にとって真に心地よい景観は何か”を提言する場の構築をめざし、このホームページを立ち上げたのは1999年のことです。開設から丸10年を迎えたこの秋、それぞれのコンテンツの内容をより充実させるリニューアルを実施しました。常に新しい情報を発信していけるホームページとなりましたので、今後も引き続きご利用ください。
野水瓦産業株式会社
代表取締役 野水隆雄